- 自分で書いて手元に置く
- 費用はほぼかからない。亡くなったあと、家族が家庭裁判所で検認を受ける必要がある
- 自分で書いて法務局に預ける
- 保管の申請は1件3,900円。検認は要らない。亡くなったあと、指定した人に知らせてもらえる
- 公正証書遺言
- 公証役場で公証人が作る。財産の額に応じた手数料がかかり、証人2人が立ち会う。検認は要らない
遺言書でできること
遺言書がないと、遺産は相続人どうしの話し合い(遺産分割協議)で分けることになり、話がまとまらないときは法律で決まった割合(法定相続分)が目安になります。遺言書があれば、次のようなことを自分で決めておけます。
- どの財産を、誰に、どれだけ渡すか
- 相続人ではない人(お世話になった人や団体)に財産を渡す(遺贈)
- 遺言の内容を実行する人(遺言執行者)を決める
- 子どもが未成年のとき、もしものときの未成年後見人を指定する(東京家庭裁判所の手引は、未成年後見人を「遺言等で指定され又は家庭裁判所で選任された」人と説明しています)
3つの方法を比べる
| 自筆証書(手元に置く) | 自筆証書(法務局に預ける) | 公正証書 | |
|---|---|---|---|
| 作る人 | 本人 | 本人 | 公証人(本人が内容を伝える) |
| 費用 | ほぼかからない | 保管の申請1件3,900円 | 財産の額に応じた手数料 |
| 証人 | 要らない | 要らない | 2人 |
| 亡くなったあとの検認 | 必要 | 不要 | 不要 |
| なくす・書き換えられる心配 | ある | 法務局が原本とデータを保管 | 公証役場が原本を保管 |
| 向いている人 | まず書いてみたい人 | 費用を抑えて確実に残したい人 | 内容が複雑な人、自分で書くのが難しい人 |
検認は、相続人に遺言の存在と内容を知らせ、遺言書の形や日付、署名などをその日の状態で確かめて、偽造や変造を防ぐ家庭裁判所の手続です(裁判所)。手元に置いた自筆証書遺言は、家族が見つけたあと、遺言者の最後の住所地の家庭裁判所で検認を受けます(遺言書1通につき収入印紙800円と切手代)。
自筆証書遺言の書き方の決まり
- 本文・日付・氏名は自分で書く — パソコンで打ったり、ほかの人が代わりに書いたりはできません。押印も必要です。
- 財産目録はパソコンでもよい — 2019年1月13日から、財産目録はパソコンで作ったものや、通帳のコピー、登記事項証明書を添付してもよくなりました(法務省)。
- 目録の全ページに署名と押印 — 自分で書いていない目録を付けるときは、目録の全てのページに署名し、押印します。
- 目録は本文と別の用紙に — 本文と同じ紙に、自分で書いていない内容を入れることはできません。
法務局に預ける場合は、用紙の大きさや余白などの様式にも決まりがあります。書く前に、法務省の「遺言書の様式等についての注意事項」を確かめます。
法務局の保管制度
2020年7月10日に始まった自筆証書遺言書保管制度は、自分で書いた遺言書を法務局(遺言書保管所)に預けられる制度です。
- 保管の申請の手数料は1件3,900円(収入印紙)。撤回や変更の届出は無料です(法務省)。
- 預けた遺言書は、亡くなったあとの家庭裁判所の検認が要りません。
- 亡くなったあと、あらかじめ指定した人に、遺言書が保管されていることを知らせてもらえます(指定者通知)。2023年10月2日からは、知らせる相手を、相続人や遺言執行者などに限らず3人まで指定できるようになっています。
注意したいのは、法務局は遺言の内容の相談には応じず、預けたことで遺言が有効だと保証されるわけでもないことです。内容に迷うときは、弁護士や司法書士などに相談してから書きます。
公正証書遺言の費用と流れ
公正証書遺言は、公証役場で、本人が伝えた内容をもとに公証人が作る遺言書です。証人2人が立ち会います。日本公証人連合会が公表している手数料の基準は次のとおりです(2026年10月20日に確認)。
| 目的の財産の価額 | 手数料 |
|---|---|
| 50万円以下 | 3,000円 |
| 50万円を超え100万円以下 | 5,000円 |
| 100万円を超え200万円以下 | 7,000円 |
| 200万円を超え500万円以下 | 13,000円 |
| 500万円を超え1,000万円以下 | 20,000円 |
| 1,000万円を超え3,000万円以下 | 26,000円 |
| 3,000万円を超え5,000万円以下 | 33,000円 |
| 5,000万円を超え1億円以下 | 49,000円 |
- 財産全体が1億円以下のときは、1万3,000円が加わります(遺言加算)。
- 病気で公証役場へ行けないときは、公証人に病院や自宅、施設へ来てもらえます。病床で作るときは手数料が50%加算されることがあり、日当(1日2万円、4時間以内なら1万円)と交通費がかかります。
- 正本・謄本にあたるものは、電子データなら1通2,500円、書面なら1枚300円です。
受け取る人が複数いるときの計算のしかたなど、実際の額は公証役場で見積もってもらいます。また、2025年10月1日から公正証書の作成手続がデジタル化され、条件を満たせばウェブ会議で作ることもできるようになりました(指定された公証人の役場から順次)。
遺留分に気をつける
遺言書で自由に分け方を決められるといっても、兄弟姉妹以外の相続人には「遺留分」という最低限の取り分があります。遺留分より少なくしか受け取れなかった相続人は、多く受け取った人に、その差額をお金で払うよう求めることができます(2019年7月1日からの制度)。
この請求は、相続の開始と、遺留分を侵害する贈与や遺贈があったことを知ったときから1年、または相続の開始から10年のうちに相手に意思を伝えないと、権利が消えてしまいます(裁判所)。遺言書を書くときは、遺留分のことも考えて分け方を決めると、家族のもめごとを防げます。
よくある質問
パソコンで書いた遺言書は有効ですか?
自分で書く自筆証書遺言は、本文・日付・氏名を自分の手で書くことが条件です。パソコンで作ってよいのは財産目録だけで、その場合は目録の全ページに署名と押印が必要です。
エンディングノートに書いた希望は、遺言になりますか?
なりません。法務省と日本司法書士会連合会のエンディングノートも、遺言のような法律上の効力はないとしています。財産の分け方を確実に決めたいときは遺言書を作ります。
遺言書は書き直せますか?
書き直せます。新しく作り直すほか、法務局に預けた遺言書は保管の申請を撤回することもできます(撤回の届出は無料)。
何歳から遺言書を書けますか?
民法では15歳から遺言ができます(日本臓器移植ネットワークも、臓器提供の意思表示の年齢をこれに合わせて説明しています)。
あわせて読む
出典
- 自筆証書遺言に関するルールが変わります。(法務省)
- 遺言書の様式等についての注意事項(法務省)
- 自筆証書遺言書保管制度(法務省)
- 自筆証書遺言書保管制度の手数料一覧・遺言書保管所一覧(法務省)
- 公正証書遺言の作成手数料は、どれくらいですか?(日本公証人連合会)
- 2025年10月1日から公正証書の作成手続がデジタル化されます(日本公証人連合会)
- 遺言書の検認(裁判所)
- 民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律について(相続法の改正)(法務省)
- 遺留分侵害額の請求調停(裁判所)
- 未成年後見人選任の申立ての手引(東京家庭裁判所)
- エンディングノート ~あなたに届け、わたしの想い~(法務省・日本司法書士会連合会)
- 意思表示は誰でもできますか。年齢の制限はありますか。(日本臓器移植ネットワーク)
出典の確認日: 2026年10月20日